19になった

ドキュメンタリー・アンド・モキュメンタリーブログ

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夢の中で彼と出会った。凄く心地いい感じがしたが、同時に不安でもあった。水の中に溺れていく様な感覚を持ったと同時に、自分の中の何かが崩れ落ちていった。目覚めるとそれは意外に爽やかな朝だった。

隣にいる女が言った。「うなされてたけど何か夢を見たの?」僕は何食わぬ顔で「いいや」とだけ答えてキッチンに向かった。嘘をついた昨夜のことをコーヒーを飲み干すように忘れた。

これから大人になろうとしていた私は、彼と出会って未だ知らない自分を知った。誰彼にでもそういう体験は訪れるのだろうが、僕が知ったことはあまり誰にでも訪れるようなものではないのかも知れない。

私は彼と沢山の何かを経験したわけではない。彼を眺めていただけにすぎない。それでも私には永遠に忘れられないような瞬間だった。彼は若くしてこの世を去った。いや、寿命を全うしたのかも知れない。

私はまた今日も空っぽになった虫かごの中を見つめるのだ。