19になった

ドキュメンタリー・アンド・モキュメンタリーブログ

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誰かが突然誰かの目の前にやってきて、これは希望の光だと言ってそれを渡した。
彼はそれを求めていたから、疑いもせず、まして意気揚々とそれを受け取った。
誰かはまだ彼の目の前にいた。
彼はその誰かを見つめていた。
手には希望の光を持っていた。
彼はその誰かを見つめ続けた。
手にはまだ希望の光があった。
その誰かは彼を見つめていた。
彼の手には希望の光があった。
その誰かは時折彼から目を逸らした。
彼の手にはまだ希望の光があった。
暫くして、その誰かは彼の元を去っていった。
理由は色々あったが、彼にはそれを理解しようとか、そういう体力はなかった。
希望の光は溶けてしまった。
彼の手元には鉛が残った。
それを地面に置きさえすれば、彼は鉛の呪縛から解放された。その場に留まらず、自由な人生を送ることができた。
しかし残念ながら、彼にはそれができなった。
行為事態は簡単であったけど、行為が含む意味を理解することは難しかった。
そのうち、鉛を抱え続けることと、意味を理解することどちらの方が難しいかを考え始める様になった。どっちがどっちなのかを彼はわからなくなっていった。
次第にこのままここで地面に打たれた杭のように立ち続けるのが辛くなり、自棄を起こしてそれを地面に放り投げようとした。
しかし彼はやはりそうすることができなかった。
誰にも彼にもなぜそれができないかの意味がわからなかった。
彼はまた誰かが彼の前を通り過ぎることを夢見た。
彼は誰かがそれを下ろしてくれて、また新たな希望の光を届けてくれると願っていた。
それから暫くするとそういう人が現れた。新しい人だった。新しい希望の光だった。その人は優しく鉛の塊を地面に下ろしてくれた。新しい希望の光を彼に与えた。
前のより、輝いて見えた。もうこの光を頼りに、どんな暗闇の中でも安心して生きていけると思った。
何を誓うでもないが、何かにもうこの光を鉛になんか変えさせないと誓った。
しかし、また同じことの繰り返しだった。
希望の光は時と共に溶けて鉛に変わった。
彼は今までどんなふうに鉛を抱えていたかをできるだけ正確に思い出した。
右手を上にして、左手を下にして鉛を抱え、それの上に右頬を置いた。彼はそのまましゃがみ込み、大切に鉛を守った。誰にも見られないように、誰にも見つからないように、ひっそりとこっそりとその鉛を守った。