19になった

ドキュメンタリー・アンド・モキュメンタリーブログ

甘い予感

クローゼットの中には着なくなった服が。今か今かと待ち侘びている。陽の目を浴びることを。僕みたいだ。君みたいだ。ありふれてる才能と、ここにしかない野心を、搾り取るネクタリンみたいな果汁の甘さみたいに舐めて。テーブルライトはコンセントにささないと光らない。それだけでは存在すらしていない。僕たちもまるでそれのようだ。そんな人たちに光を当てるはずの音楽で、絵画で、文芸であるはずの芸術も、価値というのは結局は誰かが決めた物差しの上にしかない。相対的に良いものより、絶対的に良いものを作りたい。そっちの方が簡単で、難しい。それはまるで改修工事中の時計台。それはまるで道路を凍らせる真冬の雪。それはまるで君の寝息みたい。

僕は強くありたいと願う。そしてそれは孤独であり続ける覚悟や、勇敢であり続ける勇気とは違う。弱い自分を受け入れる懐と、それを他者に伝えることを怠らない勤勉さであるのかもしれない。

リリースされた新譜を聴くのを躊躇う。好きな人からのLINEを開くのを躊躇う。自分しか知り得ない感情を、それは誰かを傷つけてしまうという観念を、心にずっと持ち続ける。

君と僕がまだ近かった頃のことを思い、そうしてそこに戻る必要も、そうしている現在にするべきだった決断を、僕は濃い霧のなかで信号機の光だけが行方を指し示すかのような弱い指針を、それでも信じながら進む。