19になった

ドキュメンタリー・アンド・モキュメンタリーブログ

ミッドナイト・ランデブー

また僕は夜に逃げてる。君が好きなバンドをなんとか好きになろうとしてる。だけど無理だ。この事実をもう受け入れた。長かった梅雨が明けて、もう皆んな平気で街を歩いてる。一丁前にそれなりに隠し事を抱えこんだまま。

「梅雨明けちゃったね」

「やっとだね」

「うん。でも雨好きだったんだよね」

「なんで?」

「音とか、匂い」

「そうなんだ」

「嫌い?」

「匂いは苦手かな」

「前から思ってたんだけど、僕たちもう無理だよね」

「え」

「なんかもう嫌になっちゃった」

「なんで」

「だってもう何もかも合わなくなっちゃったよ。前は傘さしながら二人で歩いたりしたじゃん。お金なんて要らない様な二人だったじゃん。歩いて遠くまで行ったし、シャネルの前はビームスの服を買って喜んでたよね」

ビームスなんて歳じゃないでしょ」

「だけど俺はあの頃がいいよ」

「人は皆んな変わってくんだよ」

「俺は変わらなかったよ」

「変われなかっただけじゃない?」

彼が出て行ったドアの方向を見てる。こんなに分厚くて重厚なドアだったかなと思う。カーテンを開けると夏の兆しが痛いほど街を照らしてた。清々しい気持ちの入道雲が空を闊歩して、それを鬱陶しいがる人が地面を漂っていた。