Schwa
「君の匂いはどこか懐かしい感じがする。」
と言いそうになってやめる。
君と居酒屋に行く。
コロナのせいで亡くなったもの一つ思い出してる。
僕はいつも通りビール一杯で真っ赤になって、君が驚く。
「ここのお店はピーマンの肉詰めが美味しいですよ。」
「本当だ美味しい。」
「嫌いな食べ物は?」
なぜかネガティブな質問が口から出る。
タバコを吸って息ができなくなる。
肺疾患を持ってるのになんで僕は吸っちゃうんだろうか、と考えながらもう一本吸う。
誰かの叫び声がする。うるさい。
「どこか別のところ行きませんか。」
「そうだね。」
手早く会計を済ませて、お店の前のコンビニによる。アイスを買って、あてもなくフラつく。
「あの人の新しいEP聴きました?」
本当はもっとエロい質問がしたい。
あいつは抱いてよって言われたのに、俺はなんか意味わからないことばっかしてる
「きいたよ。よかったね。」
君はいつもそう。否定なんてしない。でも僕は君が見たいって思う。僕のことを否定して欲しい。
「終電ありますか?」
「うん。あと10分かな。」
「あ、よかったです。」
「誘わないの?」
「え?」
「私もう待てない。」
なんてなることなくて、彼女は改札を通る。
振り向いて欲しい。女々しいわがままだけど、そう願う。