恋文
天候は晴れ。少し雲が出てるくらいでちょうどいい。花粉がない世界で、冬の寒さを耐えた植物達が春になり、意気揚々と花を咲かす。
カネコアヤノを聴きながら駅まで歩いて向かう。心地いい風が僕の頬を撫でる。
駅について電車に乗る。混雑はしてなくて、濃厚接触を避けれるぐらいの人の数。
マスクをしたサラリーマン。おしゃれな格好をした老夫婦。お寿司のTシャツを着てる女の子に下校には早すぎる高校生。
窓から入り込む陽の光が暖かくて、ネバヤンのヤシノキハウスを再生する。
駅に着くと人が多くて、ちょっとだけ困惑。
しまった。僕には彼女の姿が見えた。
予定より3分遅れて到着する。
ネバっこい声がこれから起こる何かをワクワクさせる。サビ前のちょうどいいところでイヤホンを取りながら、彼女に近づく。
僕は謝りながら、彼女は笑顔で、安心する。
と同時に緊張もしてみる。だってこっちはノープランだ。
緻密な計画を立てるとこれからどうなっちゃうのかわからないという不安はないのだろうけど、プランを練ってる時に、ここで彼女にアイスクリームを買う、とか考えて、現実にそういうことをしているのを想像すると、ぎこちなくてキモい。
どうせ僕は悩んじゃう。ここでアイスクリームあるよって言っちゃうと、うわ、コイツなんでも調べやがってんな、キモいな、とか思われちゃわないだろうかと。だからノープランだ。無責任だ。でもまあ気負わないぐらいが好きだ。
話は戻って、彼女はかわいい。短めのポニーテルに、ワンピースを着てる。首筋から若干いい匂いがして、春の陽気さに映える白い肌が清潔にエロい。耳の横の方には2つホクロが着いてて、エロい。
見つめちゃいたいほど大きな瞳に恥ずかしくて見つめれない心の僕がいる。テンションが上がって、なんとなく今ならイモムシも食べちゃえるかもしれない。嘘、さすがに無理だ。でもそれぐらい僕はご機嫌になる。
扉を彼女より先に開けて、車道側を歩く。義務感なんてなくて、媚び売っちゃう。ついつい。
頑張らなくても楽しい会話ができる。リズムが合う。というか頑張らないから楽しいのかもしれない。いやーこんな可愛い子と、気持ちのいい空気の中、お散歩してるなんて人生勝ったなーなんてウキウキで、コーヒー屋に向かう。
タバコを差し出すと、ありがとうと彼女が受けとって、それを吸う姿もまたよくて、タバコによるニコチン、コーヒーによるカフェイン、彼女による得体の知れない幸福な何かによって酩酊する。
そんな日を夢見る。家の中だから出来ること。妄想は世界を豊かにしますねえ。