Good News
誰かが座ってた向かい合わせの椅子。
もう誰も戻ってこないのかもしれない。
コーヒーでも飲もうとして椅子に腰掛ける。
緩やかに鳴く椅子の音に耳をすませながら、だらしなく座る直前まで背中の力を抜いた。
空は雲ひとつなくて太陽が顔を出していた。
コーヒーメーカーで作られるコーヒーはカフェインが強く、それを二杯分、大きなマグカップで飲むものだから、飲み終わる頃にはカフェインで頭が少しだけクラクラしていた。
それも相まって、冬の晴れた日の中、ブラックコーヒーを飲むと天国にいるかのような気分になった。
頭の中は宇宙のことを考えていた。
1日なんでも好きなことができるならエリア51に入るか、宇宙飛行士になるか、NASAの総合司令官になりたいと考えた。
宇宙人はいるのだろうか、月から見た地球はどんなだろうか、宇宙ゴミでとっ散らかってるのだろうか、想像に想像を重ね、生きている実感が徐々になくなっていく感じを得た。
携帯にラインの通知が来て、目を開ける。
平凡な、何も変わらない世界が見えた。
ひとつ変わっていたのは目の前に人が座っていたことだ。
目が一瞬合い、逸らす。
顔には泣いた後があったような気がした。
あの人を見たあと、非科学的な根拠で宇宙人はやっぱりいるのかもしれないと思った。
そうして椅子から立った後、前へと進んだ。
そしてさっきまで正面に座っていた人の影はなく、振り返らずに進んでいくことを決めた。