19になった

ドキュメンタリー・アンド・モキュメンタリーブログ

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雨が降るのに誰も傘をさそうとしない。すごく嬉しくなってやっぱり僕は飛び跳ねる。僕は覚えてる、夏の台風の夜、傘を捨てて外に出て、誰もいない別世界の中で子供のように雨と遊んだことを。僕は覚えてる、雨の中を傘を忘れて去っていく女の後ろ姿を、抱きしめることなんてできなかった、遠い後ろ姿に聞こえた耳鳴りのことを。僕は忘れられない、大きな木の下で雨宿りしながら休めた肉体のことを。雨の日に出会った人がいて、雨の日にした後悔があることを僕は忘れることができない。侘しく照らす電灯に映る名前のない滴は一滴一滴刻一刻と形を変えて流れていく。それは僕に永遠と刹那の両方を教える。雨の音があの人の声をかき消して、雨の音で聞こえないふりをしたあの人の声がある。誰も雨の色を見ることはなく、誰も雨を掬おうとはしない。ふんずける水溜りから弾けた大粒の雨がまた新たな水溜りを作りそこで僕は世界の仕組みを知る。雨が悪い天気だと言う人の口に大量のマシュマロを打ち込み、火をつける女を見て僕は恋に落ちた。雨の日に聞く曲を決めてるか?僕は決めてる。でも彼女は決めていなかったから、そっとサングラスを外した。雨宿りはバカのすることではない。雨宿りは雨を楽しむ大人の嗜みであると言ってたおじいさんの手を握り、回らない方向に腕を回しもぎ取った。やはり雨はいい。晴れもいいが、雨もいい。