19になった

ドキュメンタリー・アンド・モキュメンタリーブログ

早朝の戦士

卒業式、静謐な体育館に私の名前が呼ばれる。後ろの在校生席からはヒソヒソ声が聞こえる。もうこの状況には飽きた。

だから人前に出るのはあまり好きじゃない。別に私は自分の顔に特別な感情は抱かない。でも周りは違う。入学式の日もクラス替えの日も可愛いって言われながら何人かの女子に囲まれる。気づけば周りにいつも誰かがいる。一人でいるのはなんだか恥ずかしいから、そうして誰かがいると安心する。みんなで学校終わりには小洒落たカフェに行く。別にコーヒーが飲みたいわけでも、お喋りがしたいわけでもなくて、なんとなく仲間ハズレになるのが怖いからみんなについて行く。イチゴのケーキか、ティラミスかで迷って、30円安いイチゴのケーキを注文する。注文が届いて、お母さんの顔が浮かんで、申し訳なくなりながら食べるケーキはあまり美味しくない。イチゴのケーキを崩しながら、携帯と熱心ににらめっこする友達を眺めながら、この人たちは私がこの見た目ではなくても、こうして一緒にいるのかどうかを考える。そんなことを考えると、答えは決まってノーになる。するとちょっと苦しくなってため息が出そうになる、ださないけど。右の子が話しかけてくる、でもそれはインスタのストーリーを気になってる子が見てくれたとかそういうどうでもいいことで、私が聞いてほしい話をし始めると、ふーんとだけ言ってまた自分の話をしだす。そうして時間が過ぎて、家に帰る。そんな毎日だった。特に誰かに理解されてたわけでも、誤解されるわけでもなく、ただ私の存在だけで環境は成り立った。それはつまり、別に私は私じゃなくても良かったということを意味した。

 

式が終わると周りの女の子達は泣いてた。私も悲しいフリをした。卒業式の写真をインスタグラムにあげたりした。イイネの数が私が一番多いことがまた私を落胆させた。

 

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